1大動脈瘤
大動脈は血圧にさらされ、常にストレスがかかっています。動脈硬化で傷ついた動脈に高血圧によるストレスがかかると、大動脈が風船のように膨らむ大動脈瘤となります。放置すると風船のように破裂し、大出血をおこして死にいたります。心臓近くにできる胸部大動脈瘤と、おなかにできる腹部大動脈瘤があります。
大動脈瘤にはほとんど症状がありません。まれにご自身で「脈打つお腹の腫れ物」を自覚される方もいます。症状は進行してから現れるので、動脈硬化や高血圧がある高齢者は一度、腹部の触診や腹部エコー検査を受けてみることをお奨めいたします。
治療に関しては、以前は膨らんだ大動脈を人工血管に置き換える手術がほとんどでしたが、最近、ステントグラフトという人工の筒を折りたたんだものを足の血管から大動脈まですすめ、動脈瘤の場所でそれを拡げて大動脈瘤に血流が入らないようにする治療が行われるようになってきました。
2大動脈解離
大動脈瘤は数年かけて大きくなる一方、大動脈解離は突然生じ、数分〜数時間で症状が完成します。症状は、①突然の胸・背中の痛みで、「バットで殴られたような」としばしば表現されます。失神することもあります。
大動脈解離は大動脈瘤同様、破裂することもありますが、むしろ、血管が閉塞したり、心臓の周りに解離が及ぶことにより死に至る怖い病気です。血管には何層かの膜により構成されています。図のように、動脈の一カ所の壁が裂け、層の間に血液が流入し、高い血圧のためさらに裂け目が広がります。その裂け目が心臓に及ぶと心臓が締め付けられる心タンポナーデとなり、死に至ります。この病気は長い間放置した高血圧により生じることが多く、血圧が高いのであっという間に血管が裂けて重症化します。
治療はなるべく早く血圧を下げ、場合によりなるべく早く避けた血管を人工血管に置き換える手術をします。