理想的な「かかりつけ医」って?

今困った症状がないのに治療しないとならない病気とは?

かかりつけ医とは、病気になった時や健康に不安があるときに、すぐに相談できる一番身近なお医者さんのことです。
国や日本医師会では、かかりつけ医を次のように定義しています。
「何でも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」
ではどのような医師がかかりつけ医としてふさわしいのでしょうか?
九州にいる義父が体調不良のとき、どの医師にみてもらうか、探したことがありました。
その際は、まだどういう病気かよく分からない状態でしたので、病気の診断力を推し量る事柄を重視して病院・医師選びを行いました。
具体的には、総合内科専門医資格(内科疾患診療のトレーニングを十分積んで得られる)を有しているか、学会活動はどうか(経験した患者さんのめずらしい診療経験の発表(症例報告といいます)、日頃の診療の中で調査研究を行い、研究発表をしているか)、学生や若い医師の教育を受け入れているか(教えるということは、より深く勉強する、ということです)、などです。
そのときお世話になった医師はいまでも義父のかかりつけ医であり、人格・技量共に優れ、その病院のスタッフも素晴らしい方ばかりでとても満足しています。
今回は、理想のかかりつけ医を見つけるための留意点について述べようと思います。

困った症状がないのに治療しないとならない病気とは?

かかりつけ医として内科医がもっともふさわしいと考えるのは、患者さんの体調不良を最初に診るのがかかりつけ医だからです。
外科医はすでに診断のついた患者の治療に当たる場合が多いのに対し、内科医(特に、総合内科専門医)は患者さんの問診、症状、所見から、正しい診断(疑いでもいい)にたどり着くための訓練を行ってきています。
そのためにまず重要なのが、症状についてじっくりと話を聞くことと、身体所見(視診、聴診、触診、神経所見など)をみること、です。
トレーニングを受けていない医師は、つい検査に頼りがちです。
レントゲン写真1枚より、「その症状は突然生じましたか、徐々に、ですか?」という質問の方が大切なことが多いのです。
また、かかりつけ患者の身体所見をふだんから丁寧にとる姿勢があると、たとえば「ふらつく」という症状が出た場合、歩き方が普段と違うのか否かに気づくことができ、あたらな病気の早期発見につながるのです。

最新の医学の進歩におくれをとらないように勉強を怠らない姿勢がありますか?

上に述べたように学会活動まではしていなくても、その医師が勉強熱心かどうか、院内の掲示やホームページで推し量ることができます。
学会参加のために休診されると、患者さんにとって時折不便かもしれませんが、僕はむしろ勉強熱心で好ましいと思います。また、地域で行われる医師向けの講演会が頻繁にありますが、その案内チラシなどが診察室で見かけることがあると思います。その講演会の演者であったりするとさらにいいですね。

自分の専門外のことでも、実情についてよく知っていますか?

自分の担当患者さんには、自分の専門領域の病気だけが発症するわけでは当然ありません。
むしろ違う領域の病気の方が多いので、頻度の高い他領域の病気の診断・治療・予後(その病気にかかると、今後、どういう経過をたどるのか)についてある程度知識と経験を有することが理想的です。
例えば内科医にとって他領域ことといえば、脳動脈瘤の治療にはどのようなものがありその長所短所は?、白内障手術の際、内服薬で中止すべきものがあるか?、画像診断で偶然見つかった胆石はどのような状況なら手術する価値があるのか?、などです。
診察室での何気ない会話から推察できることがあると思います。
いろいろ質問してみて下さい。
広く知識のある医師は、自分の非専門領域の病気の疑いを判断できるし、さらに自分の手に負えるか否かの判断も適切です。またそのような医師は近隣医療機関の実力もよく把握しており、紹介先の選択も正しいです。

無駄なお薬を減らそうとする姿勢はありますか?

他の専門領域の医師における診療内容をある程度把握することは、そこから出されているお薬について、必要性が高いか低いか、ということまで判断できるか、ということにつながります。
それが分からない場合も多いので、他医と連携をとって内服薬の優先度の判断を行ってくれるのはいい医師です。
また、引っ越しなどに伴う転医の際で前医が多くの薬剤を処方している場合、優先度を決めて服薬数を減らそうとしてくれるのは好ましいですね。

適切な受診間隔についての配慮と説明がありますか?

以前診てくれた先生は90日処方をだすけど、今の先生は30日しか出してくれない、ということをおっしゃる方がいます。
患者さんの病状により、定期受診の間隔を縮めたり空けたりするのには理由があります。
たとえば、
①病状が不安定でこまやかな観察を怠ると後手に回り、病状が悪化して取り返しが付きにくくなる
②最近新しい治療をはじめたばかりで副作用の観察が必要
③糖尿病で血糖値が良くない方(糖尿病の指標は最近1ヶ月の血糖値を反映)
一般的には長期処方を好まれる方が多いですが、上記のような理由を明確に伝えてくれる人はとてもいいと思います。また、3ヶ月に一度お会いするだけではその人の変化に気づきにくくなるので、かかりつけ医の役割を期待されるのであれば長くとも2ヶ月おきの受診をおすすめします(3ヶ月ぶりの人はカルテをよくみてみないと、その人のことを思い出しにくいのです)。

自分にあった良いかかりつけ医をみつけるために参考にしてみて下さい。