新型コロナウィルス感染症/ワクチンについてわかってきたこと

 当初、新型コロナウィルスは蔓延するにつれて病原性(重い症状の引き起こしやすさ)が弱まり、従来の風邪ウィルスのようになっていく、と予想されていましたが、残念ながらそうでもなさそうです。ワクチン接種後の「ブレイクスルー感染」も報告されるようになり、これからさらに長い戦いになることが予想されます。デルタ株によるコロナウィルス感染症拡大が止まらない中、感染症そのもの、あるいはワクチンに関する様々なことが明らかになってきました。患者さんの中には、ワクチン接種が進んでいるのに感染者が増えていることから、ワクチンは効いていないじゃないか、といわれる方もいます。そういった誤解を生じるのは、メディアやネット・SNSに氾濫する情報を適切に取捨選択し、冷静な解釈ができていないから、と考えられます。

感染爆発。。これからコロナの死亡者数はうなぎ上りになっていく?

 テレビでは毎日のように感染者/重症者数が増え、医療現場の状況逼迫について報道されています。しかし現第5波コロナによる死亡者数は第3波(1月)、第4波(5月)と比べて少なく抑えられています(下図、NHK作成)。

感染者数は3倍近く増えているのに。その理由は、現在の感染者の大半が若い世代であることでしょう。逆に高齢者の感染者が少ない理由はワクチン接種率が高いためと考えられます。イスラエルではワクチン接種が広まるとともに、感染者数が激減していることが分かります(下図)。

さらに、諸外国で「入院患者の97%がワクチン非接種者または未完了者」「死亡者の99.5%がワクチン非接種者」と報道されているように、ワクチン接種を完了した人は重症化リスクが大きく下がります。これからはコロナで死ぬことは少なくなっていきますが、ワクチン接種が広まる前にデルタ株が流れ込んでしまったが故に、未接種の世代にお鉢が回って、感染者が増え、その中から気管内挿管+人工呼吸器管理やECMO(エクモ:酸素化のための体外循環)などの集中治療が必要になる人が増えている、という事態になってしまったのだと思います。このような重症肺炎(コロナ以外の原因)の高齢者を数人治療した経験がありますが、X線CTで本来真っ黒にみえる肺が真っ白に変わり、100%酸素吸入でも血中酸素濃度が保てず、結局救命できなかった方が多く、無力感を感じました。若い方は諸臓器の予備能力が高いので、頑張って治療すれば助かる可能性が高いですが、助かっても回復するまで2週以上の期間を必要としますし、なにより死の恐怖と戦うことは非常に過酷です。

コロナウィルス感染症以外の病気は死亡率が上がるかも。

 最も憂慮すべきことは、若い世代の重症者が長く病床を占め、普段、コロナ以外の病気に係る集中治療病床/マンパワーがコロナに取られてしまい、突然悪くなる心疾患や脳卒中の入院が制限され、結果としてコロナ以外の病気による死亡率が上がることです。コロナウィルス感染症疑いの患者が、受け入れ先病院がなく救急車の中で10時間近く留め置かれた、という報道があります。ということは、それ以外の全ての病気の救急搬送も滞る、ということ。最近、周辺で救急車のサイレン、多いと感じませんか?今、救急搬送が必要な心臓病、脳血管疾患などに自分やご家族が罹るわけにはいけませんよね。では、私たちはどうすればいいのでしょうか?その答えとしては、持病のある方は特に、普段よりさらに病気・健康に対する意識を高く持つということに尽きると思います。お薬の飲み忘れはほぼ皆無に、コロナを恐れて過度な閉じこもり生活にならないように、熱中症になりやすい行動・環境を避ける、基礎疾患における生活習慣是正(糖尿病の方なら食事・運動療法)を維持強化する、など。その他、いつもと体調が違う、と感じたら、早めにかかりつけ医に相談すること。対面受診が心配なら電話診療でいいと思います。必要に応じ、主治医がアドバイスをくれると思います。電話のみでお薬が出せるようになっていますし、対面受診が必要ならそう促してくれます。コロナの中、電話診療ばかりで数ヶ月来院しなかった方に、「気になる検査結果が出ているので、怖がらずに来院していただき、検査を」と促したところ、ようやく受診してくれました。ところが、久しぶりの検査結果は何らかの重大な病気の発症を疑う所見。総合病院に紹介したところ、残念ながら膵臓がんという診断でした。ウィズコロナの時代、医療とのつきあい方は難しくなってきましたが、かかりつけ医をうまく利用する、という点は変わらないし、さらに大切になってくると思います。

ワクチン接種後も感染防護対策は必要、その理由は?

 ワクチンをすでに2回接種したと声高にさけび、飲食店等でマスク着用や検温を拒否する高齢者がいるそうです。孫ほどの従業員を困らせる。情けない限りです。報道などでも知られるように、ワクチン接種はコロナウィルス感染症の発症や重症化を避けることはできても、感染自体を防げるわけではありません。米国は、「ワクチン接種済みならマスク着用免除」の方針を撤回しました。今、PCR検査の陽性率が20%を越える事態となっています。このことは、症状はないけどウィルスをまき散らす「無症候性感染者」が、以前にも増して多くなってることを示唆します。ワクチン以前は、貴方のお孫さんが、無症状なのにマスクをしたり、面会を避けたりしていましたね。今は、ワクチン接種を終えた方が「無症候性感染者」になる可能性が指摘されています。無自覚に、ワクチン未接種の下の世代にコロナをうつす可能性があるのです。また先日、ファイザーワクチン2回接種後の50歳代の知り合い医師が、重症のコロナ感染症に罹り、搬送先が見つからず救急車の中で数時間過ごした、と聞きました(後日、この方はワクチン未接種であったと聞きました。やはりワクチンは重症化予防にとても重要。。)。ワクチン2回接種後でも、他人にうつすことも、他人からうつされることもあるのです。最近、商業施設などでは手指消毒などの感染防護対策を怠っているお客さんが目立つと感じています。今後も気を緩めず、マスク着用含め基本的な感染対策を継続することがとても大切です。

どうして変異型ウィルスのワクチン有効率が低くなり、3回目のワクチン接種でそれが高まるの?

 コロナワクチンは、ヒト体内の細胞を利用して、ウィルスの表面に存在する「スパイク」とよばれるタンパク質を合成し、その異物に対する免疫を誘導しようとするものです。今流行の顔認証システムにたとえると、スパイクタンパクが顔で、免疫細胞が認証システムです。変異型ウィルスは元来のそれと大きくは変わりませんが、一部整形手術をして一重まぶたが二重になっています。そのくらいの軽微な変化にシステムはだまされませんが、鼻筋やくちびるも整形するとシステムは見逃すかもしれません。この精度の低下はワクチン接種後8ヶ月以降で明らかになるらしく、その欠点を抗体の数で補おうとするのが3回目接種によるブースター効果(抗体量が数十倍に増える)です。米国では医療従事者接種3回目を8ヶ月以降で行うことを決めたのはこういったエビデンスがあるためです。翻って我が国のコロナ政策、お粗末です。科学よりも他のことが優先されている、、とても残念。