新型コロナウィルスワクチンに関するデマに惑わされないように

新型コロナウィルスワクチンの接種が進む一方、ワクチンに関するデマも多く流布されるようになり、メディアやネット・SNSに氾濫する情報を、いかに適切に取捨選択し、冷静に正しい判断ができるかが問われる状況だと思います。また、来年からもコロナウィルスワクチン接種は繰り返し行われる可能性があり、すでに2回目の接種を終えられた方にとっても同様に大切なこととなっていきます。今回は、コロナウィルスワクチンに関して、みなさんから寄せられる疑問について触れたいと思います。

ワクチンを打っていけないのはどんな人?

それは以下の通りです。「食品や化粧品に広く使用されている添加物ポリソルベートに対してアレルギーがある場合」。何のことか分かりませんよね。ほとんどの女性はお化粧をしますから、アナフィラキシーのリスクがゼロとは言えないです。しかしこれはきわめてまれな現象だと分かっていますので、リスクと利益を天秤にかければ接種しないという選択にはなりません。一方、複数の原因成分に対し、アナフィラキシーショックを起こした過去がある場合、状況によっては最初から接種を控えた方がいいかもしれません。僕の患者さんでは約2500名中2名でした。それ以外の方は打てない理由はありません。

コロナウィルスワクチンを打った直後に死亡。。そんな報道をみたらとても心配

メディアは、一部の事実を切り取って、いかにも普遍的なことして、商業主義優先で報道します。コロナウィルスワクチンは、医療従事者を除けば、年齢が高い方から接種されています。100歳を越える方まで。80~100歳代の方は、明日お亡くなりになってもおかしくない集団です。これだけ全国規模で接種しているのだから、不幸にして接種直後にお亡くなりになる人は確実にいます。このような報道は、寿命2年の実験用ネズミが、ワクチン接種後2年以内にすべて死んだ、というネットニュースと同じ価値しかありません。これが20歳以下の若年層での話なら別問題ですが。下の表はファイザー社ワクチン臨床試験の結果ですが、ワクチン接種群と比べ、プラセボ(ワクチンの中身のない、生理食塩水などを注射)の方が死亡数(2万人中4人と少ないですが)は少ないのです。ただ発熱、倦怠感などの副反応はプラセボに比較して15%多く、これはワクチン接種による症状であると考えられます。6月29日時点で、2回目を終わった70~80歳の方からお話を伺う機会が増えました。正確な数字ではないですが、概ね7割の方が「注射部位の痛み以外は何ともなかった」とのことです。高齢者がコロナウィルス感染症に罹患すると、基礎疾患があると年齢とともに死亡率が上がります(70~74歳7.5%、75~79歳12.8%、80歳以上20.5%)。また、ワクチンの有効率の報告をみると、毎年接種されるインフルエンザワクチンの有効性が70%を上回ることがまれなのに対し、ファイザー社製ワクチンの有効率は95%ときわめて有効性が高いのです。軽微な副反応を怖がったり、メディアの偏った報道を真に受けたりして、ワクチンを接種しない、という選択される方には、まず冷静になって欲しいと思います。

ワクチン接種後に手のしびれが。これって副反応?2回目は打たない方がいい?

ワクチンは高齢者から順番に接種されています。また、高齢者ほど、カラダの不調を感じやすいです(当然ですね)。ワクチンの接種が始まる前でも、手足のしびれ、めまい、ふらつき、腰痛、膝痛、など、訴える方はたくさんいます。ワクチン接種が始まった後も同様です。上記臨床試験の調査結果から、プラセボと比較して明らかに多かった症状(発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛など)は、新型コロナワクチン接種による副反応であると推察できますが、それ以外はたまたま生じた症状である可能性が高いです。1回の接種でも有効率約70%と高い効果を示しますが、変異型ウィルスでは30%に低下するという調査結果があります。ワクチン接種後にたまたま出た症状を過剰に心配し、2回目の接種を控えるのはいかがかと思います。

国産ワクチンの方が信頼できる。私は国産ができるまで待ちたいのですが。

選べるなら日本製ワクチンを接種したいというお気持ちはよくわかります。中国やロシア製はいやですよね。ただ、質問の答えについては、国産のワクチンを待つメリットはほとんどない、と迷いなく言えるでしょう。複数の国産のワクチンが現在開発・臨床試験中ですが、いつ実用化されるのか、そもそも実用化されるかどうかもまだわかりません。ファイザー製でもモデルナ製でも、早く打てるワクチンを打った方がいいです。もたもたしている間に感染したら、80歳以上の方は5人に1人は死に至ります。とはいっても、長期的な視点からは国産ワクチンの開発を続けてもらいたいと思います。選択肢が多いことはいいことで、例えばファイザー/モデルナワクチンにアレルギーがある人には福音です。さらに、既存のワクチンが効きづらい変異株が出現するかもしれませんし、今後、インフルエンザワクチンのように、コロナウィルスワクチンを毎年接種することも十分考えられます。これまでのように外国製ワクチンに頼っていると、今後もずっと「ワクチン敗戦国」のままです。ワクチン開発に関わる基礎研究も含め、十分予算が使われることが急務です。

ワクチン接種後の副反応にはアセトアミノフェンがいいと聞きました

解熱鎮痛剤として、①非ステロイド性抗炎症薬(NSAID、ロキソプロフェン(ロキソニン)、ジクロフェナク(ボルタレン)など)、②アセトアミノフェン、主に2つの系統が広く使用されます。コロナウィルスワクチンの副反応にはアセトアミノフェンの方がいいという風評がありの現在アセトアミノフェンを含むOTC薬剤(薬局で購入できるおくすり)が店頭で品薄になっています。このデマの出所はどこかというと、残念ながら偏った考え方をする医師からであると推測できます。理論的にNSAIDは、免疫を少しおさえる傾向にあるので、頭でっかちな偏った人は、「NSAIDはワクチンの効果を減弱させる可能性がある」と考えるのでしょう。しかし、様々な病気の治療効果を調査する臨床試験の結果が、理論とは逆に悪かったということは多いのです。その理論の正誤を証明するためには、ワクチン接種後、NSAIDおよびアセトアミノフェンを使用した人で、その後のコロナ感染症罹患率(少なくとも抗体価)が異なることを示さなければなりません。厚労省は、NSAID、アセトアミノフェン、どちらも使用できると表明しています。どちらでもいいです。

ワクチンの副反応に備えて、あらかじめ解熱鎮痛薬を出してください

この依頼は、保険診療という制度をよく理解されていない方からなされます。保険診療では、現在罹患している病気に対する治療しかできません。もしそういったことをご希望の場合、保険外診療となりますので、10割の経済負担となります。

電話診療・処方を上手に利用しましょう

定期的に診察している場合、当院はあなたのかかりつけクリニックです。ワクチン接種後、何か困ったことがあればまずはお電話下さい。副反応と考えられた場合、ご希望に応じ電話で処方を行います。近隣の方については、提携薬局に処方せんをお届けします。通院することなく薬局でお薬を受け取れます。また、遠方の方、ぜひ近所の院外薬局(他医療機関隣接、大手チェーン薬局内に設置された調剤薬局など)の名称、電話番号、FAX番号をあらかじめ控えておいて下さい。電話処方では、遠方の薬局にFAXで処方せんを送り、お薬が受け取れるようにいたします。このようなことができるのは、定期的に拝見し、基礎疾患、腎機能などのおからだの状態、現処方、など、基本的な臨床情報を把握しているからこそです。調子がいいときの定期的検査にご協力お願いいたします。