昨年8月、俳優の米倉斉加年（まさかね）さん（享年80歳）が腹部大動脈瘤破裂でおなくなりになりました。米倉さんが命を奪われたこの病気は加齢とともに増える大動脈の病気です。俳優の藤田まことさんや作家の司馬遼太郎さんも、この病気で亡くなられています。
大動脈は直径2～3センチと体の中で最も太い血管で、心臓から全身に血液を送り出す大事な役割を果たしています。大動脈瘤は、この大動脈の一部分が膨らんでできた「こぶ」です（下図CT写真、黄色い矢印）。
大動脈瘤の4分の3が腹部に発生し、男性は女性より約3倍大動脈瘤ができやすい傾向があります。大動脈瘤は少しずつ大きくなって風船のようになり、ついには破裂してしまうことがあります。大動脈瘤はただ膨らんでいるだけのときには痛みや不快感などの症状がない場合がほとんどですが、ひとたび破裂すると大量に出血してショック状態を起こし、80～90％の人が死亡します。
先日、私の患者さんも他の病院でたまたま受けたCT検査でこの病気であることが分かり、破裂直前で適切な処置を受け助かりました。大動脈のこぶが5cmを越える大きさになると年間10％が破裂するという調査があるのです。怖いですね。
この腹部大動脈瘤の早期発見には超音波検査が威力を発揮します。特に下記に当てはまる方は一度検査をおすすめします。
１ 喫煙歴のある65～75歳男性
２ 70歳以上の男性高血圧患者