高齢者の症状として多い「腰痛」。整形外科を受診する、というのが通常の発想ですね。
内科医が高齢者の腰痛をみた際に考えることは、「筋骨格系以外の臓器の異常があるのでは?」ということです。
私が経験した「内科的腰痛」の患者様についてご紹介します。
1. 78歳女性
腰痛で来院され、お話から何となく嫌な予感がしたので血液検査をしたところ、「総タンパク」濃度が高いということが分かりました。高齢者の腰痛と「総タンパク濃度の高値」の組み合わせから、免疫グロブリンという生体防御に関わるタンパクの異常の可能性を考えなけ ればなりません。
思ったとおり血中の免疫グロブリンは顕著に高く、血液がんの一種「多発性骨髄腫」であることが判明しました。この骨髄腫、その名のとおり骨が大好きで、頭や腕、足、背骨などの全身に広がり、腰椎の病変が腰痛を引き起こしていたのですね。
1. 82歳男性
腰痛で来院され、念のため内科的腰痛を考えて血液検査をしたところ、「アルカリフォスファターゼ」値が高値でした。
この検査値は肝臓の病気で異常となりますが、骨が溶け出すような病気でも上がるのです。高齢男性の腰痛と、この検査値異常の組み合わせで時折経験するのが、前立腺がんの骨転移です。
さらなる血液検査では前立腺がんの値が高く、泌尿器科に紹介し、ことなきを得ました。
高齢者の腰痛の裏には内科の病気が潜んでいることが少なくないのです。