健康・医療に関する常識・非常識 ~よくある患者さんの質問・ご依頼から

日々患者さんからご質問・ご依頼をいただきます。
皆さんが思っていることと、お医者さんが考えていることはずいぶんと違うということご紹介しようと思います。

1.「この薬は強い薬ですか?」

この「強い」という言葉にはおそらく「副作用が強い」という意味があるのだと思います。「体に負担がかかる」かどうかを心配しているのでしょうね。医師が「強い」薬と聞くと、「効果が高い」「副作用が重篤」の2つを考えます。患者さんから「強い」かどうか聞かれたら、「重い副作用は少ないです」と答えています。

2.「漢方薬だから弱いですよね?」

これも「弱い」という言葉には「体に負担がかかる」かどうか、ということなのでしょうね。
このようなご質問には、「どんな薬にも副作用があります」とお答えします。困った症状が治まる可能性もあるし、逆に副作用で困る可能性もあるのです。どんな薬にも副作用があると考えると、あなたのその症状、本当に困っているかどうか、真剣に考えますよね。

3.「風邪がひどくなるといけないので早く治した方がいいと思って。。」

これもよく聞く質問ですね。
その困った症状が本当に風邪だったとしたら、風邪はお薬では治りません。
お医者さんが風邪と診断したら、症状を軽くする薬(解熱剤、咳止めなど)を処方しますが、それらの薬で「治る」とは云わないはずです。
市販の風邪薬のコマーシャルでも、「風邪に効く」とは言っても、「治る」とは言いませんよね。
ですので、風邪の初期にお薬を飲んでも早く治るわけではないのです。ただ、心臓病などの持病がある方は、風邪のために持病が不安定になりますし、風邪でない病気(これは治療が必要な場合があります)のこともありますので、早期受診が望ましいことがあります。

4.「風邪だからすぐ治るように点滴をしてください。」

昭和の頃、お医者さんはよく注射していましたよね。
お尻に注射とか。そのころの医療の記憶が残ってて、「風邪には点滴」と思っていらっしゃる方、まだいます。
基本的に点滴は、口から水分や薬剤を摂ることが出来ない場合や、時々刻々と変わる状態(たとえば手術中の血圧/脈拍とか)を精密に管理したい場合などに限られます。食事が取れるようなら飲み薬の方がいいと思います。

5.今は症状がありませんが、前もって風邪薬をいただけませんか?

このご依頼は、「保険診療」というシステムを理解されていない方から出るものです。
薬局に行けば常備薬としての風邪薬を購入できますが、医院・病院などの保険医療機関では、「現在罹っている病気」に対する治療しか出来ません。

6.診察には時間がかかるからお薬だけいただけませんか?

現在の医師法では、すべての診療行為は「対面で行う」ことと定められています(先日、オンライン診療が可能になりましたが限定的です)。
お薬を出す、というのは診療行為ですので、原則、医師とお話をして、必要な診察をさせていただいてからの処方せん発行となります。
薬局でも、薬剤師の対面販売が義務づけられている薬品があります。医師の処方薬は、患者背景により副作用が出やすいものがより多いのです。

7.先日見たテレビでみた「脳動脈瘤」が心配に。脳MRIをしてほしい。

このご依頼も「保険診療」をご理解いただいていない方からよくなされます。
脳MRIの実施は、手足の麻痺、言語障害、認知機能の低下など、脳卒中や認知症など、脳の病気が疑われた際に保険診療として行うことが出来ます。
症状がない場合、脳ドックを受診してください。

8.先生は診察のとき、いつもパソコンの方ばかりみていますね。

そのように言われるようになったのは電子カルテが普及してからのことですね。
できれば患者さんに向き合って診療したいと思っています。でも致し方ないところもあるのです。上記のように、医師は保険診療の範囲を逸脱しないように心を配りながら診療しなければなりません。
そのためには、保険を使っても支障がないように、カルテの記載を丁寧に行わなければなりません。
これを怠ると患者さんに余計な費用負担を強いたり、せっかく時間と労力をかけて行った正当な検査/治療の費用が、保険支払機関から払ってもらえず、医療機関の赤字を招くのです。
医師は患者さんの診断を行いつつ、医療制度を守るようにカルテ記載を整える努力をしています。ご理解のほどよろしくお願いいたします。