68歳の男性が、2日前から「左足が腫れて痛い」という訴え(右写真)で来院されました。
症状から、足の静脈に血栓(血のかたまり)ができる「深部静脈血栓症」が疑われましたので、エコーやCT検査を行ったところ、
下図の ように左足の静脈に血栓を認め、これが血のよどみを引き起こして足が腫れたことが分かりました。
この深部静脈血栓症はとても怖い病気で、血栓が血液の流れにのって肺へいくと「肺動脈塞栓症」という、命に関わる病気に進展します。
これらの病気には多くの場合、明らかな原因があります。
エコノミークラス症候群といわれるように、長時間の旅行や、水分を控えることによる脱水、ある種の手術後、長期臥床などです。
この男性にはこれらの明らかな原因はなかったので、おかしいと思い、少し調べを進めることとしました。
深部 静脈血栓症の危険因子として、「がん」が考えられたので画像検査を追加してみたところ、右の腎臓に比較的小さな悪性腫瘍を発見しました。
この程度の大きさの腎臓がんは無症状であることが多いのですが、この男性のように深部静脈血栓症として発症することがあるのですね。
初期のがんでしたので、手術により完治することができたそうで、とてもうれしく思っています。
やはり少し慎重に調べて良かったです。
高齢者では「動きが少なくなる病気」が発症することが多いです。
パーキンソン病などはその代表で、「寡動(文字通りあまり動かないこと)」が症状の一つとして特徴的です。
パーキンソン病はまれでない病気ですが、さらに頻度の高い「高齢者うつ病」を発症し、家に閉じこもりがちになったため、足の血栓ができてしまった方がいました。
以前はひとりで頻繁に外出されていた82歳女性が、家族につれられて受診されました。
精神科で「うつ病」の診断がされ、足がむくむようになったとのことでした。超音波検査で、予想通り足に血栓がみつかりました。
うつ病により極端に外出の頻度が減り、足をじっと動かさずにいるため、血栓ができたのですね。
このような原因による血栓症は、特に冬に多いのが特徴です。最近寒いですが、おっくうがらずに運動することが大切です。
屋内でできる運動もありますよ。
「いきいき運動療法」というパンフレットがありますので、受診の際、お声掛け下さい。