どんな症状なら救急車を呼んでもいいの?

最近のメディア報道などで、軽症の患者さんが救急車を気軽に呼び、本来救急搬送が必要な患者さんに救急車をまわせない、といったことが知られるようになりました。

また、日中受診の待ち時間が長い、という理由で、夜間休日に急患診療所に気軽に受診するという、モラルの低い方もよく見受けられます。
救急車を呼ぶ、急患診療所にかかる、といった「緊急性」があるかどうかの判断は、医療従事者でないと難しいので、過剰にこれらを利用するという事情はある程度仕方がありません。

埼玉県では、こういった判断の難しい場合に、一般の方が看護師に電話で相談できる、「大人の救急電話相談」があります(子供版もあります)。

しかし、図のように相談できる時間帯が限られるのが残念なところです。
では、どのようなことに注意して、「緊急性」を判断すればいいのでしょうか?
症状別にご説明しようと思います。

胸が痛い・息苦しい

この症状は重篤かつ緊急性が高い病気(心筋梗塞・心不全・肺動脈塞栓症・大動脈解離・気管支喘息)のサインであり、軽くみてはいけません。
救急車を呼ぶかどうかは、症状が「突然に出たか」どうかで決まります。
数日・数週続き、つらさがあまり変わらない場合は緊急性はありません。翌日の日中に受診して下さい。
しかし、日中は何ともなかったのに夜になって症状が出てとてもつらい、という場合、迷わず救急車を呼んで下さい。

頭が痛い

緊急性のある頭痛で大切な特徴は2つです。
①「突然に」おきたか
②「これまで経験したことがない」強い痛みか、です。
②は胸の症状と同じですね。「突然」というのは、何時何分とはっきり言えるものが「突然」と表現されます。
たとえば、7時のニュースが始まり、OOアナウンサーがおはようといった瞬間、などです。
朝は大丈夫だったけど昼にはつらくなってきた、というのは「突然」ではありません。
「突然」の頭痛には、くも膜下出血や脳出血など、数時間放置すると死に至る病気が含まれます。迷わず救急車を呼んで下さい。

お腹の症状

お腹の症状で緊急性があるものはかなり限られます。
腹痛のない下痢は全く緊急性がありませんし、受診する必要さえない(治療にの有無にかかわらず自然によくなる)場合がほとんどです。
一方、腹痛の判断は難しいです。「急性腹症」といわれる緊急性がある腹痛の特徴として、
①これまで経験したことがないほどつらい
②四六時中痛い(痛みが弱まることがない) 
③お腹の筋肉が緊張して硬くなるほどの痛み。
尿路結石発作(横腹~左右に偏った腰痛)は比較的突然で、①②の特徴を伴いますが緊急性はありません。
でも、自分で病院に行けないほどつらい痛みなので、救急車で運ばれることがめずらしくありません。
腹痛でもお腹の病気ではない場合もあり要注意です。特に、みぞおちの痛みは心筋梗塞である場合があります。
その場合、「吐き気・冷汗を伴う」ことが特徴です。消化器科を受診し、ときおり診断が遅れることがあります。

発熱

99%以上の発熱は緊急性がなく、救急車を呼ぶべきではありません。
しかし、以下の特徴がある場合、緊急性があります。
①意識状態がおかしい(呼びかけたときの反応がおかしい・人格が変化したような感じ>脳炎・敗血症の可能性)
②吐き気・いつもよりもまぶしく感じる・頭を横に振ると耐えられないほど痛みが強くなる(このうち2つ以上該当)>髄膜炎の可能性)



患者さんもいろいろで、ささいな症状がとても心配になる方もいれば、重大な病気の症状をやせ我慢される人もいます。近親の方はそういった患者さんの特徴をふまえ、いつもとは違う、急がなければいけないかもしれない、と感じられたら、迷わず救急車を呼びましょう。