68歳の男性が、2日前から「左足が腫れて痛い」という訴え(下写真)で来院されました。
症状から、足の静脈に血栓(血のかたまり)ができる「深部静脈血栓症」が疑われましたので、
エコーやCT検査を行ったところ、下図のように左足の静脈に血栓を認め、これが血のよどみを引き起こして足が腫れたことが分かりました。
この深部静脈血栓症はとても怖い病気で、血栓が血液の流れにのって肺へいくと「肺動脈塞栓症」という、命に関わる病気に進展します。
これらの病気には多くの場合、明らかな原因があります。エコノミークラス症候群といわれるように、長時間の旅行や、水分を控えることによる脱水、ある種の術後、長期臥床などです。
この男性にはこれらの明らかな原因はなかったので、おかしいと思い、少し調べを進めることとしました。
深部静脈血栓症の危険因子として、「がん」が考えられたので画像検査を追加してみたところ、右の腎臓に比較的小さな悪性腫瘍を発見しました。
この程度の大きさの腎臓がんは無症状であることが多いのですが、この男性のように深部静脈血栓症として発症することがあるのですね。
初期のがんでしたので、手術により完治することができたそうで、とてもうれしく思っています。
やはり少し慎重に調べて良かったです。
エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)の原因は?