たくさんのお薬を服用するお年寄りー薬害について

高齢者の方は、臓器の老化によりお薬の代謝が遅くなったりして、薬が効きやすくなる傾向にあるので、若い方に比較して少量から置お薬を始める必要があります。また、複数の医療機関から多くのお薬が出されていることが多く、お薬の飲み合わせによる有害な副作用が出やすいのです。
高齢における薬害について、いくつかみてみましょう。

1 血圧のお薬

図は高血圧を治療されている高齢男性の治療内容と検査値です。腎機能が最初から少し低下した方に、トリクロルメチアジドという利用薬を投与すると、さらに腎機能が悪化しています。 

また、カルシウム拮抗薬という種類の高血圧治療薬を服用とすると、ときおりむくみが出ることがあります。
脳梗塞の後遺症で左手の麻痺がある方が、高血圧治療にそういったお薬を服用すると、左手にむくみが出現し、中止すると良くなっています。


右に比較して左手は
しわがめだたずむくんでいる

むくみがとれて左手のしわが出てきた

 

2 睡眠導入薬と転倒

高齢者は身体機能低下や、夜間の排尿回数の増加などにより、転倒することが多くなります。高齢者の転倒は、大腿骨・腰椎骨折につながり、運が悪いとねたきりになってしまいます。夜、排尿回数が多いからと、睡眠導入薬を使用すると、かえって転倒の危険が高まる場合があります。
ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬は、副作用として筋弛緩作用があるため、ふらつきや転倒が起こりやすいことが知られています。ベンゾジアゼピン系睡眠薬には、トリアゾラム(商品名:ハルシオン)、ブロチゾラム(商品名:レンドルミン)、フルニトラゼパム(商品名:ロヒプノール)などがあります。
また、作用時間が長い薬は翌朝への影響も考えられ、高齢者が服用するのは適当ではありません。作用時間が長い睡眠薬には、クアゼパム(商品名:ドラール)、フルニトラゼパム(商品名:ロヒプノール)、ロルメタゼパム(商品名:エバミール)、リルマザホン(商品名:リスミー)などがあります。
 

3 風邪薬でおしっこが出なくなる

風邪薬を飲んだためにおしっこが出なくなってしまう高齢男性の方がいます。そうなると膀胱がパンパンに張って苦しいために、救急外来に駆け込むことも珍しくありません。
こういった状態を「尿閉(にょうへい)」といいます。
なぜそんなことが起こるのでしょうか?
一部の風邪薬には「抗コリン作用」があります。神経伝達物質の働きを妨げるため、膀胱の神経に働いて尿の出が悪くなります。病院からの処方薬や市販薬に含まれます。
前立腺肥大を有する方は、肥大した前立腺が尿道を圧迫しているので、もともと尿の出が悪いのです。ですので、抗コリン作用を持つ薬は注意して使用する必要があります。
市販の風邪薬の説明文書には、前立腺肥大や尿が出にくい症状がある場合は、事前に医師や薬剤師に相談するように記載があります。 
 


尿閉の超音波図

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